私、立候補します!
「私は兄が一人、弟が一人の三人兄弟だよ」
「男性の兄弟は似ていたりしますか? 私は弟とは髪と目の色は似ていますが顔立ちは似ていませんので」
「男兄弟でも似る度合いは変わらないかな。自分達ではあまり分からないけどそう思うよ」
「そうですか……」
次の質問をと色々頭の中をめぐらせてたエレナは今一番興味のあることを聞いてみることに。
「ラディアント様の得意な魔術はどんな物ですか?」
「え……」
「魔術には色々種類があるようでしたのでお聞きしたいな、と……」
強く手を握られたことに気づいたエレナは言葉を止めてラディアントの様子にかたまる。
今し方兄弟の話をした時は穏やかに見えたのに、魔術のことを口にしたとたんラディアントは顔を強ばらせてしまった。
(しまった! 気になってつい聞いちゃったけど止めればよかった……!)
チェインと依代式を体験した時にエドワードは怒っていたし、ラディアントに敵と間違われた時に彼は悲しそうな目をしていた。
(知りたくて聞いちゃったけど止めればよかったかな……)
困らせるつもりではなかったけれど、ラディアントは顔を強ばらせたまま再び無言を貫いている。
何と声をかけようか迷っているエレナの耳にラディアントの小さな声が聞こえてきてエレナは首を傾げた。
「怖くないの……?」
「え……」
ラディアントはエレナに顔を近づけ、目を揺らしながら震えた声で問いかけてくる。
低い声で放たれた言葉は掠れたように聞こえて静寂にとけていく。
(手が震えてる――?)
エレナは戸惑いつつ、握っている大きな手が震えていることに気づく。
少しでも震えが止まればと思い、体を横向きにして左手を動かしラディアントの左手を自分の両手で挟むようにつかんだ。
そして、領民の子供が泣いている時に安心させるように、精一杯柔らかく微笑む。
「はい。怖くありません」
「本当に?」
「はい。魔術はサセット国の方にとって生活と共にあり、国を豊かにする大切な物なんですよね? それなら怖くありません」