私、立候補します!
(みんな元気かなぁ――……っ!)
向こうの天気はどうかなと思っていると、突然執務室のドアが勢いよく開かれエレナは体をびくりと揺らす。
ラディアントは書類の束を両手で持ち、とん、と音をたてて綺麗に揃えながら苦笑いを浮かべて扉を開けた人物を見た。
勢いよく扉を開けた青年は茶色の髪を揺らし、口に弧を描いて入室して来る。
やがてソファーに座るエレナの横に立ち止まり、ずいっと彼女の目の前に封筒を突き出した。
「あの、チェインさん?」
「エレナさんのご家族から手紙だよ」
「え……っ」
(父様達からの……)
はいどうぞ、と促されたエレナはお礼を言って受けとり、宛名が書かれている面をじっと見る。
父が書いたのだろうと思われたそれは父の文字に比べてやや小さく、弟のジルが書いた物だと一目で気づいた。
はやる気持ちを抑えて二人を見やれば彼らは頷いてくれ、エレナは封を開けて手紙をとり出した――。
――手紙の内容はこうだった。
まず、父の仕事が落ちつくのを待ったが忙しさが続いて父の手が離せそうにないので、かわりに自分が手紙を書いたこと。
母は癒術薬を飲んで今はすっかり元気になったこと。ジルも父も元気であり、子供達を始め領民も元気に過ごしているから心配はいらないと。
最後にエレナに体に気をつけるようにとラディアント達によろしく伝えるようにと書かれていた。
(返事を書こうかと思えば元気なら返事はいらないってジルらしい。――それに、母様が元気になって本当によかった)
エレナが手紙を送るとなるとラディアント達に頼まなければならない。
お世話になっているラディアント達にこれ以上の手間をかけさせないためだろうと、エレナはジルの気持ちを感じとる。
そして、母が全快したことに胸をなで下ろしながら手紙を封筒にしまった。
「返事はどうする?」
書くなら届けるよ、と笑顔のチェインにエレナはいえ、と首を横に振った。
「手紙にも元気なら返事はいらないとありましたから大丈夫です」
何かありましたらその時はよろしくお願いします、とエレナも笑顔を浮かべて返したのだった。