私、立候補します!
「心配いりません。いい方向へ向かうにこしたことはありませんが、今回の話しは何か問題が起きて途中で候補から外れてもお咎めはないと約束されていますから」
「ですが――」
「エレナさんは年頃ですし、見たところ健康でいらっしゃる。募集の条件にもピッタリです」
にこにこと笑顔で声も穏やかなはずなのに、レオナルドが言葉を重ねるごとに何だが身動きを封じられているような気がしてエレナはこくりと喉を鳴らす。
父の言葉を遮られ、エレナ達に拒否する権利はないのだと言外に言われているような気がした。
(そっちがその気ならこっちだって考えがあるんだから。――女は愛嬌だって? 私は度胸だ!)
言葉を重ねられる中でエレナは一つの可能性を閃いた。そんな大変なことを頼むくらいだからこちらからお願いの一つくらい頼んでみてもいいだろうと。
エレナは息を深く吸ってレオナルドをじっと見つめる。
「――分かりました。一つだけお願いを聞いていただけるのでしたらその話をお受けします」
「本当?」
驚く父と弟を視線で制し、エレナは再度レオナルドを見て頷き、そして強気な笑顔を浮かべた。
「はい。かわりに癒術薬をいただけるのでしたら」