私、立候補します!
(エレナさんがサセット国の貴族だったなら変わったのだろうか)
同じ国の貴族なら人柄を知る機会は増えたのか。
いっそのことラディアントと同じ王族の血をわずかでも引いていたら彼女自身の確証を得られたのか。
頭に浮かんだ考えにラディアントは顔を横に動かして自ら否定する。
(仮定したってどうにもならない。生まれなどの過去は変えられないのだから)
ラディアントがラディアントとして存在していることも、エレナがエレナとして存在していることも変えようのないこと。
ラディアントが個人として思うことは、エレナにそばにいてほしいという気持ちで。
(王太子としてはまだ彼女を知る必要がある、か……)
肩書きを持つ自分に少しの疎ましさを感じ、自らの未熟さに苦笑いが浮かぶ。
(王太子として生きる覚悟をしているはずなのに、私もまだまだか……)
しばしの間一人窓の外を眺め、静かな空間で時間を過ごしていった。