私、立候補します!
(――すごい……っ!)
ラディアントの魔術を直に見るのはエレナにとって初めてのことで、出来るなら声をあげてラディアントのもとに駆け寄りたいほどに嬉しい気持ちにみたされる。
隣にいるアレクセイも目をきらきらと輝かせて頬の朱色を濃くしていた。
二人の様子を横で見ているチェインはくすりと笑いをもらして目を細めた。
(笑ってくれてよかった。ニール閣下は厳しい人だからどうなることかと思ったよ)
頭の後ろで手を組みながら、チェインは双方の様子をうかがって密かに笑みを深めていく。
エレナが静かにしていればニールは咎めることが出来ないし、エレナは静かにしていても十分魔術を見て喜んでいる。
ラディアントも自分の魔術を彼女に見てもらえて嬉しいであろうとチェインは思った。
「――さあ、後二回は見られると思うから後をついて行こうか」
「はい」
「うんっ」
年の離れた姉弟のように似た表情を見せる二人に、チェインは今度は隠さずに笑顔を見せた。
***
その後、チェインが言った通り同じように二回結界術を見られたエレナは満足感でいっぱいになった。
手を繋ぐアレクセイも同じようで、小声ですごいすごいと言っている。
三回目の結界術を終えたところでラディアントはエレナ達の方に振り返った。
「後は移動術で国境の端まで向かうから、エレナさんとは一時お別れかな」
「あの……?」
「馬車移動で使った移動術と個人単位で使う移動術はちょっと違うんだよ」
首を傾げるエレナにチェインが補足を入れていく。
領地をまたぐ馬車移動に使用した移動術はそれぞれ場所を定めて移動術が発動するように繋ぐ物だが、個人単位の移動術は同じ領地内――安全面や治安面から個人単位で領地をまたぐ移動は非常時以外は禁止とされている――で自身と行きたい場所を繋いで移動する物なので魔力のないエレナには不可能な物だった。
(残念だけど仕方ないよね。ラディアント様達は仕事なんだし、見せてもらえただけでもありがたいことなんだ)
「分かりました。私はお城でじっとしていますね」
エレナが残念な気持ちを残しつつもそう返すと今度はアレクセイが声をあげた。
繋いでいる手をぶんぶんと振りながら不満げな声を出す。
「えー! エレナお姉ちゃんと一緒がいい!」
「ごめんね? 私には魔力がないから……」