私、立候補します!
17 説教と強い気持ち
夕方城に戻って来たラディアント達は廊下で会ったエレナとアレクセイにぎょっと目を剥いた。
どちらもあちこちに傷を作り、揃って気まずげな笑みを浮かべている。
言葉を失う三人の中でいち早く我に返ったニールは目をつり上げてエレナ達の腕をむんずとつかみ、足早に歩き始めた。
「――まったく。あなた方は限度と言う物を知らないのですか……?」
有無を言わさず執務室に連れこまれたエレナ達はソファーに座らされ、目の据わったニールにくどくどと説教を受けることに。
途中飽き始めたアレクセイに気づくとニールの怒りは増していき、エレナはひたすら謝り倒していた。
「エレナさん。あなたは仮にも貴族のご令嬢ですよね? アレクセイはまだしもあなたは女性なんですから少しは慎みを持って下さい」
「申し訳ありません……っ」
声を荒げることのない静かな怒りにエレナは平身低頭で怒りをしずめようと試みる。
ニールの怒る様子が弟のジルが怒る様子と重なり、エレナに懐かしさをもたらした。
ゆうに十分をこえたところでニールは溜め息を最後に二人を解放していく。
「夕食も近いですし今日のところはここまでにしましょう。別室でアレクセイを治療してきますので、エレナさんをよろしくお願いします」
腕を強くつかまれて痛いと訴えるアレクセイを無視して引っ張りニールは執務室から消えていく。
残ったラディアントとチェインは思わず苦笑いを浮かべてエレナの両側に腰をおろした。
「そんなに夢中で訓練をしたのかい?」
「つい熱が入ってしまったんです……」
最初はエレナとアレクセイで手合わせを行っていたが、アレクセイが二人でウィリアムを倒そうと言い出し挑むことに。
ウィリアムの剣は模造品にもかかわらず一太刀が重く、あたるとエレナに結構な痛みを与えた。
アレクセイと協力してロッドを操り繰り出すが武人に敵うはずもなく、二人はウィリアムに完敗したのだった。
エレナは手首に出来た打ち身のあとを見て、痛まないように静かに触れる。
訓練だから打ち身ですんだけれど、これが戦場で相手が敵なら間違いなく手首を切られ殺されている。そう考えると背筋がぞっと寒くなる思いだった。