私、立候補します!
「ここではよくあることですよ。ないのは他の地域で夏が訪れている間ぐらいですから」
「そうですか……」
(ラディアント様達は大丈夫かな?)
悪天候の中を歩いていった二人の後ろ姿を思い出し、エレナは目を細めて白い景色をじっと見る。
その様子を見たニールは微かに笑った。
「お二人でしたら大丈夫ですよ。このような天気に結界術を行われることはよくありますから、慣れていらっしゃるはずです」
「そうですか……」
「ええ。ですから心配はいりませんよ」
(私の雨女発動じゃなくてよかった)
ニールの城に来てから大荒れということがなかったので、エレナは今日の吹雪が久し振りに自分の雨女の影響かと思っていた。
しかし、ニールの言葉と様子によくあることだと信じてほっと肩の力が抜けていく。
エレナは昨晩からニールにほぼつきっきりで看病していた。
魔術などの影響で体調を崩したニールには癒術を使えないから、お休みいただくしかないと使用人達から聞いたエレナ。
それなら私が看病しましょうと挙手してニールのそばにいた。
朝食に栄養がとれるボリュームのある物をと言う料理人を引き止め、消化にいい物をお願いする。
結果、卵が入れられたミルク粥を作ってもらい、運んできたのである。
ベッド横の台に置くと香りに気づいたようでニールが首を傾げた。
「これは何ですか?」
「ミルク粥です。料理人の方にお願いして作っていただきました」
エレナが厚みと深みのある器の蓋を開けると、ふわりといい香りがニールの鼻をくすぐり、彼は柔らかく目を細めた。
「このような料理は初めて見ますね」
「幼い頃に風邪をひいた時、母がよく作ってくれました。ほんのり甘くて美味しいですよ」
エレナが笑みを浮かべ、小さな器に移してスプーンと共に差し出してどうぞと促す。
ニールはありがとうございます、と返してスプーンですくった一口を口に運んだ。
「――美味しい……。食べやすい甘さでとても美味しいです……」
「気に入っていただけて嬉しいです」
エレナは部屋の隅にあった椅子を運んでニールの近くに座り、顔をほころばせる。
エレナが好きな料理を気に入ってもらえて嬉しい限りだ。