私、立候補します!
(あなたはラディアント様と共に来たのですから何もしなくても構わないのに。アレクセイの相手やワタシの看病をして下さるとは思いもしませんでした)
アレクセイは元々人と打ち解けやすい性格だが、短期間でここまで誰かを気にいるのは珍しいことだった。
ウィリアムが言うには、いつも逃げ出そうとする座学でさえエレナが側にいれば張り切って受けていたという。
少し前の時間にはエレナがニールの部屋に残るなら自分もいると言い出し、最終的にはウィリアムに引きずられるように連れて行かれていた。
今にも泣きそうな息子とそれを苦笑いで見送ったエレナの姿を思い出しながらミルク粥が入れられた器を受け取る。
「ありがとうございます」
(少しだけラディアント様の妃候補として認めてあげましょう)
そう胸の中で呟き、ニールはスプーンを再度口に運んでいった。
***
――昼食時、ミルク粥はアレクセイに好評でエレナはほっとした。
ウィリアムに止められるまでおかわりを繰り返し、細身の体のどこにそれだけ入るのだろうとこれにはエレナも驚いた。
匂いにつられたチェインが小皿にもらって一口食べて気に入り、自分が体調を崩したら作ってもらおうと言っていた。
その反面、ラディアントだけはミルク粥を見て眉を寄せており、彼が牛乳嫌いなことが発覚。
チェインとアレクセイに食事中ずっとからかわれ、ラディアントは居心地悪そうに食事をとっていたのだった。
――昼間の吹雪の天候が静けさを取り戻し、闇色の空からちらちらと雪を降らせている夜のこと。
結界の補修を予定通り六日間で終わらせたラディアントは、見舞いと報告を兼ねてニールの寝室を訪ねる。
ニールはベッドの上で上半身を起こした状態で部下から渡された報告書を読んでいたが、ラディアントに気づいて報告書をベッド横の台に置いた。
「最後までお供出来ず申し訳ありませんでした」
「気にしないで下さい。体が第一ですから」
眉を下げた表情を浮かべ、頭を下げるニールにラディアントは顔を上げて下さいと柔らかい声色を意識して返す。
ここの土地を守るニールが体調を取り戻すことは、ラディアントにとって結界術と同じくらい重要だと思っている。
頭を上げたニールの顔を見て、倒れた際に見られた頬の赤みが薄れているのを見て胸をなで下ろした。