私、立候補します!
しかし、ここではっきりと返すのは釈然とせず、時間はありますよと曖昧に返したのだった。
***
最後の夜だからとエレナが借りている部屋でアレクセイと眠っていたエレナ。
ふいに感じた寒さに目が覚め、眠る前に感じていた温もりがないことに気づく。
「アレクセイ君……?」
上半身を起こしてベッドの上から部屋を見ても姿は見えず、しばらく帰りを待った後にエレナは寝衣の上にカーディガンを羽織って部屋を出た。
(どこに行ったんだろう?)
しばらく待っても戻ってこない様子からトイレとは考えにくく、父であるニールの所へは夜間は行かないようにとウィリアムからきつく言われていてそれも考えにくい。
一体どこへ行ったのだろうかと一階と三階にそれぞれ続く階段の分かれ道に着いた瞬間、叫ぶような大声が静寂を切り裂いた。
その後も大声は続き、耳をすませたエレナは一階に下りようとしていた足を三階へと向けて階段を駆け上っていった。