私、立候補します!
自分はライズ国の下級貴族の一人にすぎず、自国はもちろん他国の王族や貴族に関わる問題に口を挟める立場ではない。
改めてそう思うと、痛みを感じた胸の中がすっと冷えていくような感覚がした。
「申し訳ございません……」
(ラディアント様の言う通りだ……。私は癒術薬の恩返しをしたら家に帰るんだし、じっとしてなくちゃ――)
エレナは頭を下げ、自分の足元を見つめる。
足の近くにはばらばらになったロッドが散らばり、その破片を見ていると自分の力のなさに申し訳なくなってくる。
魔術が使えないエレナにとってロッドが頼りだった。
家では父や弟と手合わせを行い、護身程度には自信があった。
しかしそれを一瞬で修理不可能なほどに壊され、自分の力の足りなさを痛感させられたエレナは今後はもっとトレーニングに力を入れたいと思った。
一方ラディアントはエレナを気にしながらも、足元に伏せて自分を無言で睨んでいるアレクセイから目をそらさずにいる。
浮かんだあどけない笑顔を消し、目に決意をこめたラディアントは床に突き立てた剣を引き抜いてアレクセイの背中に向かって剣先を動かした――。