檸檬
それから顔を背けた。
初めて、私の意思で。
「次、授業なんでしょう?」
「洽さん怒ってる、」
「セフレに弁解なんて、する必要ないのに」
資料を渡して手首を返してもらう。
榊は傷付いた顔をしていた。
私はここに居る誰よりも頭は悪いと思うけれど、今、間違ったことを言ったつもりはない。
そういう関係を作ったのは、榊だ。
居酒屋の隅の席に座っていた高谷を見つける。
「榊来ねえって。洽が来るのかって聞いてから答えたんだけど。キミ等喧嘩でもした?」
だからこんな煙の多い場所になったのか。
榊がいる時は私も高谷も吸わない。