檸檬
よしよし、と頭を撫でられる。
「わんわん」
「あ、俺猫派だから」
「至極どうでも良い」
「まあ兎に角、そのことに関して洽は悪くないから謝らなくても良いと思う」
煙草の火を消す。酒も強い高谷は、ちっとも酔っていないみたいに話した。
「でも前言撤回はしてきた方が良い。それから、恋人になりましょうって言う」
「やだ。死んでも嫌」
「榊のこと好きなんだって認めたくない? それとも年上のプライドが許さない?」
人のことを年増と言うこの男だって同じ年齢なのに。
あ、でも年上は榊にとって、ということなのか。