檸檬

言われて、更に力を込めた。

「榊、すきー」

「あれ、檸檬の匂いがしない」

ぽつりと呟いて、くるりと足ごとこちらを向いた。抱き締め返してくれて、やっと何かが合わさった気がした。

「俺で妥協してくださいよ」

あの時、聞いたのと同じ言葉。

もしかしてそれ、告白?
私が高谷を好きだからって、それで妥協なの?

「私、分を弁えてる人好きよ」

「そういうことは素面のときに言ってください」

「じゃあ今、恋人になりましょうって言っても聞いてくれない?」

同じくらいの位置にある榊の目を覗く。
やっと高谷に言われたことを思い出してきた。


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