檸檬
あれれ? と思いながら首を傾げると、榊が手を握ってきた。
「俺は何だって良いんですよ。セフレだろうとセカンドだろうと。ただ、今日みたいに悲しい顔するくらいなら、恋人になりたいです」
キスをした。初めから私の身体は分かっていたのかもしれない。
こんなに想ってくれる榊を好きにならないはずはないと。
思えば、榊はいつも隣にいてくれた。くっついて、私が高谷を思い出している時も抱き締めてくれていた。
その手を握り返す。
それが、答え。
「忘れても大丈夫なように手に書いとく」
「どうせ消えますよ、汗で。眠った後に、俺が顔に書いときます」
……年寄りは労るように誰か榊に教えてやってください。
2014.11.20