檸檬

嘲笑って煙草を咥えて、火を点けた。
椅子の背と壁に背中を預けて紫煙を吐く。

灰皿を探そうと視線を事務机の上に移す前に、すぐ近くに来ていた彼が入り込んだ。

「じゃあ、俺にしてください」

煙草を取られて、どこにあったのか灰皿で火が消される。それをぼんやりと見ていると、どん、と鈍い音が顔の横で彼が手を付いたのだと分かった。

「何?」

「俺で妥協してください」

妥協? と首を傾げる。
自然な動きで彼の顔が近付いて、その唇が簡単に私の唇に重なった。

「嫌がんないんですか?」

「ファーストキスはもう済ませてるし」



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