檸檬
ちょっとムッとした表情を見せた彼は、ゆるゆると輪郭を撫でてくる。少し擽ったい。
「私を相手にしたって愉しくないよ」
「檸檬の匂いがする」
椅子の軋む音が響いた。
恐ろしく脈絡のない、その返事。
私は榊と関係を持った。
疲れた声を出した高谷は机に突っ伏している。その机をトントンと叩けば、顔を上げた。
「お疲れ様です」
「オツカレー。後は任せた」
「放られても困るんだけど。まあ眠ってください」
私が言う前に眠っていた。真似出来ない特技のひとつ。