檸檬

今はわからない。断言出来ることは、最初に会った頃の高谷は美大に進みながら、才能を持ちながら、デザインやアートに何も興味を持ってはいなかった。

努力どころの話ではない。やる気を持ち合わせてはいなかった。

高谷の描いたデザインをなぞる。
だとしても、これに私が色を乗せる権利は普通に考えても与えられないはずだ。

「洽が色やるなら、やっても良い。俺、キミの作る色スキだし」

そう言われたときは泣きそうな程嬉しかった。

だから、私が色になりたかったなんて、そんなことはすぐに頭から離れた。


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