檸檬
夕陽が差し込む。オレンジが真っすぐに部屋に入って、影になっている自分の所までは届かない。
突然ぎゅ、とお腹まわりを締め付けられて驚く。そういえば後ろに榊がいたんだった。
「お腹空いた?」
「うん。洽さん食べたい」
この男の言葉の甘さはどうにかならないのかと思う。指摘しようと少し振り向けば、唇が重なった。
まるで、夜が来るのを待っていたみたい。
後ろ首を甜められて逃げようと前に出るけれど、ホールドされていることに気づく。腹部から上がってくる手が怪しい。
「めちゃくちゃにしたい」
年寄りを労る優しさを誰か榊に教えてあげて。