君は僕を好きになる。
If you want to be happy, be!
――またか。
十二月初旬。
早めの忘年会が行われる居酒屋の一室で、スマホ片手に溜息をつく。
『ごめん、この後接待入った。遅くなるから、挨拶はまた改めて』
彼が約束をドタキャンするのは、最早恒例のことなんだけど、今回ばかりは……。
いたたまれず近くの同僚に声をかけてお店を出ると、外は驚くほど寒くて、空に向かって吐き出す息は真っ白だった。
何だかなー……。
本当は明日、実家の両親に彼を紹介する予定だったのに。
直哉《なおや》にとって、私との結婚への一歩って、たったニ行の言葉で取り消す事が出来る程度のものなの?
「なんて、考えても仕方がないか」
もう一度表示したメッセージを眺めながら柵に寄り掛かると、肩にふわりと温かいものがかけられ、体がビクッと震えた。
さりげないトワレの香りで、振り向かなくても、そこに誰が居るのか分かってしまう。
「お前寒くないの?」
「寒い、けど」
俯いて呟く私を鼻で笑って、同じように柵に寄り掛かって隣に立ったその男が、私は苦手だったりする。
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