my sweet devil


3歳の時。


俺は家の近くの公園にいた。


その公園には大きな桜の木があって、よく母親と遊びに来た場所だった。



桜の木の下で、桜を見上げて座ってみると、温かい涙が流れてきた。



「ふっ…うぇ…おかあさん…」


母親との思い出が甦る。


どうして死んじゃったの?


どうしてぼくを一人にするの?



「うえーっ」


さみしいよ


『篤志、泣かないで』って頭をなでてよ


「おかあさん…っ」



その時


「どうしてないてるの?」


誰かに声を掛けられた。


泣いてるのを見られたくなくて、必死に涙を拭く。



目の水分が少なくなって、目の前の少女の顔がハッキリとわかる。



「……っ」


「なぁに?」


「きみ……てんし?」


ほんとに、天使に見えたんだ。


柔らかそうな色素の薄い髪

クリッとした大きな瞳



可愛くて

可愛すぎて



子どもながらにドキッとしたのを覚えてる。



「てんしじゃないよ。わたしはめいだよ」


「めい……?」


「うん。わたしのなまえ。めいっていうの」


「めい……」


そうだよ、俺は


この時から芽依に恋をしていたんだ。



*
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