my sweet devil



担任が教室に入ってきて、体育館に移動するように言った。


まったく、迷惑な話だ


人より余分に緊張しないといけないし


代表挨拶なんてしたら目立って、さらに女達が鬱陶しくなりそうだし


もううんざりだ。



そう思っていた時。


ツンツンって、背中をつつかれた。



隣にいた朝陽がビックリした顔をしている。


パッて振り返ると



「………っ」


「いりますか?」


「え?」


さっきのリスが、飴を持って立っていた。


……近くで見ると、さらに可愛い。


リスじゃない


天使みたいだ。………って、俺はロマンチストじゃねーっての



身動きしない俺に、天使はアワアワし始めた。



「いいいらないよね?ごめんね!」


真っ赤な顔をして、去ろうとした天使の腕を無意識に掴んでいた。


「ちょうだい?」


……君を。


「え?」


……欲しいんだ。


「飴、ください」


……まさか、こんなに簡単に堕ちるなんて。


「はい!」


……その可愛い笑顔を、俺だけのものに。



飴を渡して走り去る天使の背中を見つめる俺に、朝陽が言った。


「一目惚れなんて、初めてじゃない?……お互いに」


後から聞いたこと


元気がない俺を見て、芽依が無意識に動き出していたらしい。


朝陽の彼女になった、みなみから聞いた。



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