my sweet devil
「いらっしゃいませー」
元気な店員の声が、気まずい空気の私たちにかけられる。
「ここでいい?」
亮太郎くんは窓際の、入り口から比較的近い席を選んだ。
彼の言葉に素直に頷く。
これから勉強教えてもらうのに、この空気嫌だな……
そう思って視線を逸らした時、ちょうどトイレから出てきた人と目が合った。
「あっちゃ…」
名前を口にしかけて、慌てて止める。
でも亮太郎くんにはバッチリ聞こえてたみたいで、私の視線を辿るのがわかった。
二人の視線の先のその人は、ゆっくり歩いてコチラに近付いてきた。
そして私を見た後、私の前に座る亮太郎くんを睨む。
「あっちゃん、これは、あの……」
弁解しようとする私を鋭く見る亮太郎くん。
私はそれ以上何も言えなくて、嫌な沈黙が3人の間を流れた。
何か言ってよ、あっちゃん……
その時。
「篤志くん?」
聞き覚えのある甲高い声が聞こえ、そちらに目を向ける。
「岡田、さん……」
「芽依ちゃんに、杉浦くんじゃない!もしかしてデート?二人付き合ってるって噂だけど」
「そんなんじゃ、ないよな?芽依。」
あっちゃんの強い言葉。
逆らえるわけないよ……
「……うん」
亮太郎くんが小さくため息を吐いたのが聞こえた。
*