my sweet devil


「そろそろ、行かなきゃ…」


ボソッと呟くと、重い腰を上げる。



やだな……


ただその言葉しか浮かばない。



あっちゃんは、もうとっくに家を出た。


いつもおしゃれなあっちゃんが、更におしゃれして


まるで知らない人みたいだった。




怖いよ、あっちゃん


ほんとに、あっちゃんは私を好きって思ってくれてるの……?



私はあっちゃんが……



ガチャッと玄関の扉を開ける。



「……っ!」


「よ!」


あっちゃんに負けないくらいおしゃれに決めた亮太郎くんがいた。



「どうしたの?!」


「どうしたのって、迎えに来たに決まってるじゃん」


「そ、っか……」



一緒の家に住んでるあっちゃんは先に行っちゃうのに


亮太郎くんはわざわざ遠回りして迎えに来てくれるんだね。



「……アイツは?」


穏やかな亮太郎くんの目が細められる。


亮太郎くんをこんなにさせるなんて、あの人だけだよね。



「あっちゃんは先に行っちゃった。岡田さんと一緒に行くんだって!」


わざと明るく言うと、亮太郎くんは困ったような笑顔を私に向けた。


だから、目を逸らして前を向いたんだ……



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