my sweet devil


案の定、先に入って行く二人。


岡田さんの手は、あっちゃんの腕に絡みついている。


心がキシキシ音を立てる。



「俺らも行くか」


二人が入って少しすると、亮太郎くんは満面の笑みを浮かべて言った。



「亮太郎くんって、優しいフリして実はものすごくSでしょ」


「ハハ、よく言われる」


わ、笑って言うことじゃないし……



入ってみると、やっぱり暗い建物の中。


どこかから岡田さんのものであろう悲鳴が聞こえて


一瞬下を向いた時


パタンって音が聞こえて、亮太郎くんが見えなくなった。



もしかして……はぐれ、ちゃった…?


や、やだ!怖いよ!


「亮太郎くん、どこにいるのー」


半ば泣きそうになりながら立ち止まる。


戻るのも怖い


進むにも進めない



どうしたら……



その時。


腕を強い力で引っ張られると同時に口も押さえられて


恐怖で体が固まる。



亮太郎くん、じゃないよね……?



震える私を真正面から抱き締めるその人


胸に顔を当てて、わかったこと。


この匂い、知ってる



「驚かせてごめん」


「あっちゃん……」



忘れるはずもない、大好きなあっちゃんの香り。



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