my sweet devil
「篤志くんには失望したわ。まさか私を置いて芽依ちゃんとどこかに行くなんて」
芽依が家に入るのを横目で確認した後、俺は岡田さんを置いて歩き出す。
岡田さんはそんな俺に追いつく為に、少し小走りになった。
「ねぇ、篤志くん。聞いてるの?」
「他の人に言う、言わない。どっちっすか?」
この人と長く話すつもりはない。
家で待ってるから。
たぶん彼女は、声を押し殺して泣いているから。
「さぁ、どっちだと思う?」
ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべた岡田さんを、俺は無表情で見つめる。
そして踵を返すと、家に向かって歩き出す。
「ちょ、ちょっと篤志くん?!」
焦って俺を引きとめようとする岡田さんも無視。
だから、俺はこの人と長く話すつもりもないし。
この人の冗談に付き合うつもりもない。
「周りの人に言うわよ?!」
彼女のその言葉に、俺の足はやっと進むのをやめた。
*