ベルリンの壁ドォォン‼︎
最初は大人しくしていた。

カトちゃん並みの綺麗なくしゃみ音。常に3度くらい音程がずれている歌声。ボフッという詰まり気味のオナラ音。

一番イラっと来たのは「ごめん俺AVは大音量で見る主義だから、それだけは許して」と100%イケメンな笑顔を向けてきたことだ。

言うとおり、時々聞こえてきた。大小高低熟ロリ様々なあえぎ声が。

契約更新料を払ったばかりだったし、イケメンで友達も多いこいつとあまり関わりたくなかったため、私は全てを我慢していた。

ちょうど苗字も、ヤツが西田でわたしが東野。まさに冷戦状態。

事態が変化したのは、4月後半。

彼氏と別れてしまった私は、鼻水をすすりながら布団に入っていた。

すると、ちょうど壁越しに聞こえてきたのだ。しかもいつもより大音量のが。

嫌でも耳に入るその声によって、イライラムカムカムラムラと私の心が乱されていく。

気がつくと、私は壁に向かって正拳突きをかましていた。

しかし、その日の彼は画面の女ではなく、生身の女を相手にしていたらしい。

部屋中を震撼させた私の壁突き攻撃のおかげで、ムードが台無しになり悲しい夜を過ごすハメになったとのこと。

そして、「お前こそなぁ、メタルとかゴリゴリ重い曲ばかり聞いてんじゃねーよ! 夢にクラウザーさんが出てくるだろうが!」と逆ギレされた。

以降、私と西田の間に生じていた猫かぶりというバリアが解除されたのだ。
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