ベルリンの壁ドォォン‼︎

「いいなぁ、あの西田くんの隣住んでんでしょ? お醤油きれたから貸して~とかできるじゃん」

「ないない。むしろもれなく壁から音痴な歌とオナラ音が聞こえてきて最悪」

「あはは、それウケる」

友達との昼休みを終え、私は1人でゼミに向かった。

今日のゼミは、冷戦終結に向けたドキュメンタリー映像の鑑賞だった。

ちょうどベルリンの壁崩壊の場面。その壁は西ベルリンを囲む物理的な壁でかつ、冷戦の象徴。

私は要点をメモしながら、厚いコンクリートの壁をハンマーで叩き、ドリルで崩す若者たちの姿を眺めていた。

すると、教授が席を外したスキに、遅刻で1人の男子が教室に入ってきた。そいつは迷わず私の隣に座る。

「ねぇ、明日バイト終わった後、部屋行っていい?」

「は?」

急に耳元でひそひそ声を出されたため、鼓動が乱れる。

「お前の部屋にUSB忘れてたと思うんだよね」

「あんたの物はもう何もないはず」

「いや、探させて。あれに入ってたレポート無いと必修落とすんだわ」

彼は両手を合わせ懇願の表情で私に詰め寄った。

「う……」

私はこいつを部屋に入れたくない。

もちろん話し声をも通す薄い壁の先には西田のヤロウがいるし、何せ、こいつは浮気されて別れた元彼なのだ。

ふと、右斜め後ろに座っている西田の姿を見た。

ヤツは机に顔を伏せ爆睡していた。

ちょっとはレポートのために映像見とけよ、このイケメンチャラクソゆとり野郎!
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