遊川さんは今日も最強
「うわあ」

「うっさい、網目!」

「す、すいませんっ」


鼻血が出るかと思った。
俺の想像力マジやばすぎる。

はあはあ、と呼吸を整えていると、隣のデスクの大田が憐れみの視線を俺に向けてきた。

「落ち着きなよ」

「な、なんだよ」

「皆まで言わなくてもいいよ。大人しそうだけど、やっぱ網目くんも男だよね」

……馬鹿にされている。

つか、こいつには弱みを握られている。

自分でも信じられないことだが、俺はよりにもよって遊川さんに恋をしている。
しかも、先日の飲み会でそれが大田にバレてしまった。

笑いながら「協力するよ」と言ってはくれたが、何をどうしてもらったら遊川さんとどうこうなれるのかさっぱりわからない。

そもそも、俺って遊川さんに男だと思われているのかが謎だ。

「げっ」

ボケっとしてミシンを扱うものではないらしい。
いつの間にか下糸と上糸がこんがらがって縫い目がガタガタになってしまっている。

「うわ、やり直しか?」

はーっと大きなため息をつくと、脇からすっと作成中のスリッパが奪い取られる。
リッパーを持って涼しい顔でスイスイ手を動かすのは遊川さんだ。
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