NA・NA・MI
すると洋介は急に立ち止まった。
「何?」
洋介の顔色ばかりを気にしていたアタシは、気付かなかったんだ。
ここはホテル街…。
ずっと無口だった洋介が口を開いた。
「入ろ?」
洋介がアタシの手を強く握る。
「でもアタシお金持って来てないし…」
アタシの声は緊張で裏返った。
「いいんだよ。金なら俺が持ってるし、奈菜に出して貰おうなんて思ってないよ?」
洋介の口調は優しいけど、目がギラギラしてる。
アタシは怖くて、どうすればいいのか分からなくて、泣きそうになった。