NA・NA・MI
ババァの声がすると、少しして玄関が開く。
「あの…どなたかしら?」
そう言って戸惑うババァの顔にアタシは違和感を感じた。
アタシが出て行った時とは随分様子が違うんだ。
綺麗にセットされた髪、薄く上品にされた化粧。
外を少し出歩けば、品のあるちょっとしたセレブと勘違いされるだろう。
「…アタシだよ」
アタシはそう言うだけで精一杯だった。
「奈菜なの…?とりあえず中に入りなさい」
声を聞いてアタシって分かる所は流石に母親だな。
プチセレブになった母親の後ろを、ブスになったアタシが歩き、居間に入る。