でも、好きなんです。
既婚のおっさんは置いておいてさ、他にいい男いないわけ?」

他の男・・・。一瞬、窪田さんの顔が浮かぶ。




「・・・先輩から、突然キスされた。」

「えーーー?!ちょっと、やばいじゃん、なにそれ、その話、チョー楽しすぎる!」


 美穂に、窪田さんとのことを話すと、美穂は、うーん、と考えこむような顔をした。


「なんか、かなり遊び慣れてそうな人だね。その人、モテるの?」

「うーん、噂によれば、モテるみたい。でも、彼女はしばらくいないんだって。遊ぶ女の子はたくさんいるけど、付き合おうって気持ちになれない、って前に聞いた気がする。・・・いい人なんだけどね。」

「ふーん。で、愛美はどう思ってるの?その人のこと。キスされて、ときめいた?」

「ときめいた?・・・って、よくわかんないよ。」


 正直、あれから、窪田さんのことが気になってしまっているのは事実だった。

 もともと、笑った顔が小さな男の子みたいで可愛いなとは思っていたし、お洒落なスーツや、少し短めにしてカラーされている髪型も、すらりとした体も、はっきり言って、正直好みだ。

 冗談にしたって、どうしてあんなに女慣れしてて、モテていそうな人が、私にキスなんかしたんだろう。


「でもたしかに、愛美、だいぶ可愛くなったよ。爪もさ、最近綺麗にしてるでしょ。」

「ああ、これ・・・。」


 たしかに、髪型を変えてから、色々と気がつくようになって、爪も今はピンクベージュで整えているし、肌も化粧水や美容液にこだわるようになって、肌荒れしなくなった。

 朝の化粧も、念入りにするようになったと思う。


「ちょっと愛美、もしかしてこれからモテ期始まっちゃうんじゃないでしょーね?マジ許せないんだけど!」


冗談まじりで美穂が言う。


「ないない!あるわけないじゃん!」


ほんと、酔った席でちょっとキスされたくらいで、モテるなんて勘違いしたら、だからモテない女は、って笑われちゃうよ。。
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