でも、好きなんです。
五分ほどして、窪田さんが戻ってきた。


フロアの違う文書課まで、五分で行ってくるなんて、びっくりするほど早い。


「早かったですね!」


「世界新?」


そう言って、にかっと笑う。


ほんと、子どもみたい。


息は、はあはあと苦しそうで、全然余裕がなさそうなくせに。


「それは、ちょっと無理です。」


 笑いながら答える。


「え~、世界新でしょう。ねね、世界新のご褒美にさ、河本さん、今度ご飯いこ。」


「ええ?」


窪田さんは、周囲に人がいないのを確認すると、そっと近づいて小声で言った。


「少し、話がしたいんだ、駄目かな?」


少しトーンを落とした甘い声で言われ、どきりとして黙ってしまう。


窪田さんって、なんていうか、私のすべてを見透かしてる感じ。


「え、あの・・・。」

「また、メールするから、考えておいて。」


そう言って、窪田さんは私の返事もまたずに行ってしまった。

またしても、窪田さんのペースにのせられてる。
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