でも、好きなんです。
「どうしてですか?」


「だってさ、好きな人に対しては、そんなふうに簡単にかっこいいとか言わないでしょ、女の子って。」


「え?」


「あーあ、河本さん、まるっきり俺に興味ないんだな。わかってたけど。」


思いがけずにそう言われて、固まってしまう。


「く、窪田さん、リップサービスが多すぎます。」

やっとのことで言う。顔が熱い。


「リップサービス?そんな余裕ないよ。

本気で落ち込んでんの。

河本さんってなんていうか・・・、攻めどころがマジでわかんないんだよな。

結局、課長みたいな正統派男前が強いってことなのかなあ。」


「攻めどころってそんな・・・。」


攻めどころどころか、窪田さんに振り回されっぱなしの私だ。


「ね、映画でもいこ。」


窪田さんが突然言う。


「え?」


「せっかくまだ時間があるんだからさ、楽しいことしたいじゃん。」


言われるがまま、二人で映画を見ることになった。


なんていうか、追求を許してもらえない。


思わせぶりな窪田さんの台詞ばかりが頭の中をぐるぐる回ってる。
< 33 / 70 >

この作品をシェア

pagetop