でも、好きなんです。
「やべー、俺泣いちゃったよ。・・・見られてたかも知んないから、先にカミングアウトsとくよ、恥ずかしいけど。」

窪田さんが、気まずそうに口を開いた。

「あ、今、なに泣いてんの、馬鹿じゃないとか思ってるっしょ。」

「そんな、思ってないです。」


強く否定する。

その後は、二人でレストランに入った。

思いのほか話が盛り上がって、二人でワインを二本も開けてしまった。

帰り道、窪田さんがしんみりとした口調で話し始めた。


「今日の映画さ、なんていうか・・・、遠距離とかさ、自分に重ねちゃうとこがあって・・・。

前の彼女とね、そういうことがあって・・・。

・・・あー、泣いちゃうとか、ほんと、かっこわる。」


「かっこ悪くなんか、ないですよ。」


そう言うと、窪田さんが、今日一番の真剣で寂しそうな目で私を見ていた。

そんな目で見ないでほしい。

目を伏せたときに、つまづいてしまった。


「ちょっと、河本さん、大丈夫??」


 おぼつかない足取りの私を窪田さんが抱える。

 いい匂い。

 そういえば、窪田さんからは、いつもいい匂いがする。

 そのまま、抱きすくめられる。


「窪田さん・・・?」


 酔いのせいで、頭がぼんやりしていた。


「俺ね、あんなことしたの、初めてだから。」


「え?」


「・・・ムリチュー。」


なんて答えたらいいのかわからず黙ってしまう。


「河本さんのこと、初めはなんとも思ってなかったんだ。

でも、もともと優しくていい子だなって思ってて・・・。

擦れてなくて、素直で、一緒にいるとほっとするなって。

でも、河本さんが課長を見る目に気がついたら、なんか、気持ちを抑えられなくって・・・。

ごめん。」


いつも優しい窪田さんなのに、間近で見る表情は、まるで知らない男の人みたいでドキドキする。


窪田さんが、そっと体を離した。


「ごめんね、突然こんなことを言って。

今、付き合ってなんて言っても、きっと混乱するね。

・・・ていうか、今言っても振られるだけってわかってるし。

とにかく、ちゃんと説明しておきたかっただけだから。」


その後、窪田さんは何事もなかったかのうように私を家まで送り届けて、
帰って行った。


もう、なにがなんだかわからない!





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