でも、好きなんです。
揺れる気持ち

失敗

窪田さんからの、突然の告白に、頭がごちゃごちゃしたまま、翌日出社すると、私のひどいミスが発覚していた。

取引先に提出する資料の数字が、一桁、違っていた。

取引先からの指摘で発覚したらしい。

その話を聞いた時、背筋をつうっと冷たい汗が流れていく感じがあった。

いつも優しい山村課長も厳しい表情だ。

「本当に、申し訳ありません。」

とにかく謝るしかなかった。

「いや、僕も、確認が甘かったよ。僕の責任でもある。」

「違います、私が、もっと念入りに確認をしていたら・・・。本当に、申し訳ありません。」

頭を下げながら、ぼんやりと考えていた。

きっと、罰があたったんだ。

窪田さんにちょっとキスされたり、ちょっと綺麗になったと言われて、浮かれていた罰があたったんだ。

今まで地味で、目立たなかったくせに、慣れないことをして、仕事に集中できていなかったから、こんなことになった。
 
今までも、仕事がものすごく出来たわけではなかったけれど、ブスで仕事も全く出来ないと言われないようにと、一生懸命仕事をしてきたのに。

こんなミスをするなんて・・・。

やっぱり、身分不相応に、はしゃいだりしなければよかった。ほんと、私ってくだらない。

落ち込んだ気持ちは、昼になってもそのままだった。

お昼も、そのトラブル対応に追われ、ひとりで食べた。

午後は、山村課長と一緒に、取引先へ謝罪に行った。

取引先の部長が出てきて、課長と二人で頭を下げた。

はじめの電話では、怒り心頭していた部長だったが、私たちが行く頃には、だいぶ怒りは収まっていたようで、後半は、和やかに世間話などをして、その場は収まった。
 
取引先のビルを出ると、社用車の中から、課長は部長へ簡単に報告し、とりあえず、今回の件はなんとか収まったようだった。
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