でも、好きなんです。

こんなときこそ女子会!

「愛美!元気出して!」

私の失敗の話をどこかから聞きつけて、茉莉が励ましてくれた。

「ありがとう・・・。でも、私ってホント駄目な子だよ。」

「なーに落ち込んでんの!

 私たちOLは、そんなことで落ち込んでる暇はないんだよ?!

 次の週末、買い物行くよ、買い物!」

「え?いや・・・えっと・・・。」

「え?じゃないよ!

 こんなときは、パーッと服でも買うに限るよ!

 ・・・それにほら、例の窪田先輩との話も聞きたいし。。」

茉莉が、ひとりで勝手に予定を決めてしまう。

私の言葉に聞く耳も持たない。

・・・・・・・
 
土曜日、三宮で茉莉と千春と待ち合わせをした。

「さーて、張りきって、旬スタイルを入荷しましょうか。」

 茉莉が、冗談めかして言う。

 そういう茉莉の服装は、白いロングカーディガン。

 まだ九月の初めだが、足元はすでに温かそうなショートブーツだ。
 
 対して千春は、シフォン素材のベージュのブラウスに、チェックのスカート、さりげなく首元に光るフラワーモチーフのネックレスがいかにもお上品。

スカートの丈は、今年流行のミディアム丈だ。お嬢さんらしい雰囲気の千春によく似合ってる。

 それに対し、私はと言えば、下はなんの工夫もないジーンズに、上は白シャツという完全なリラックススタイル。

「あーあー、駄目だよ、愛美。いい?今日はまだしも、デートのときは、ジーンズなんか、絶対駄目だからね!っていうか、パンツは駄目!わかった?」

 早速、茉莉に駄目出しされる始末。

「そうだね~。愛美ちゃんは、割と女の子っぽい服が似合いそうな気がする。」


 千春が、いつもの優しい口調で言ってくれる。
 
 まずは駅近くのファッションビルに入り、ぐるりとフロアを一周する。

 ワンピースにブラウス、色とりどりのニット、店の中には様々な色が溢れかえっていて、目まいがしそうだった。

 茉莉と千春が、次々と服を見つけてきては、私の胸元にあて、ああでもない、こうでもないと話している。

 千春が何着目かで持ってきたのは、薄いピンク色のニットワンピースだった。

 千春が、胸元にあてる。次の瞬間、ぱっと顔色が明るくなったように思えた。

(これ、可愛いかも。)

 そう自分で思ってから、気恥ずかしくなる。

 可愛いとか、ないない、私に限って、ない。

「これ、可愛いよ、愛美!ね~、見て見て茉莉、これ良くない?!」

 そう言って、千春が茉莉を呼ぶ。

「お~、似合う似合う!気張りすぎてなくて、愛美のナチュラルな感じも出てるし、これいいよ。試着してみなよ。」

そう言われ、試着室に閉じ込められる。

 恥ずかしいなと思いながらも、嬉しくて、試着してみると、やっぱりすごく可愛くて(服が、だけど。)、落ち込んでいた気持ちが、少しだけ、明るくなった気がした。
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