でも、好きなんです。
私から見たら、二人とも幸せそうに見えるけど、彼氏が出来たら出来たで、悩みはつきないんだな。


「まあでも、今一番面白いことになってるのは、愛美だよね~。」


 茉莉がにやにや笑いで私のほうを見る。


「面白いこと、って、なんもなってないよお。」


 慌てて否定する。

 たしかに、窪田さんとは、驚きの急展開だけど・・・。

 肝心の課長とは、今のところなんの進展もないし、なんていうか、私、前に進めてるのかな?

 
「私が好きなのは、山村課長だもん。」


茉莉が、驚いたような目で私を見る。


「まーだそんなこと言ってるの?家庭がいる人なんか、やめときなよ。」


茉莉の言葉に、思わず口をつぐむ。


「茉莉、言い過ぎだよ。・・・愛美もそれはわかってるんだろうけど、好きなんだよ、そういうことって、あるじゃん。」


千春がフォローを入れてくれるが、茉莉は釈然としない様子だ。


「・・でも、そんなの、愛美のためになんないし、深入りしないうちに、やめたほうがいいんだよ。」


茉莉が声のトーンを落として言う。


「やだなあ、茉莉に言われなくたって、私と課長は今までも、そしてこれからも、きっとなんともならないって!」


重くなった空気を打ち消すように、冗談めかして言ってみる。

少しの間の後で、茉莉が、あははと笑う。


「あはは、そうだよねえ。

あの山村課長と、愛美がねえ。

いや、愛美可愛くなったよ?

可愛くなったけど、それでも、ねえ?ないよねえ。」


そんなことないし!と内心思いつつ、重い空気が一蹴されて、なんだかほっとした。


「ほんと、窪田さん、いいと思うよ。

 あんなイケメン、正直言ってうらやましいよ。

 私が愛美だったら、即オッケーする。

 窪田さん、うちの課でも人気あるんだよ?」


 茉莉が言う。

 たしかに、窪田さんは、私にはもったいないくらいの人だ。

 だけど・・・。

 どうしても、課長のことが心に引っかかってる。

 不毛・・・だよね。
< 44 / 70 >

この作品をシェア

pagetop