でも、好きなんです。
「ふう・・・。なんとか出来たね。」
「はい・・・。」
「・・・って、ごめん、遅くなっちゃったな。
送るよ。」
課長が時計を見て言った。
「え、大丈夫です!」
「大丈夫じゃないよ。」
そう言われて、課長に送ってもらうことになった。
「準備、なんとか無事終わって良かったな。
河本さんのおかげだね。
あとは、明日、寝坊しないようにしなきゃな・・・。
新幹線、七時だったね。」
今日はだいぶ肌寒い。
街路樹のある道を、二人で並んで歩く。
「ほんと、早起きしなきゃ・・・。」
課長といると、窪田さんといるときのように自然に話せない。
「窪田君、羨ましがってるんじゃないかな。
ひとりだけ留守番で、ふてくされてるかもね。」
「あはは、そうですね。
窪田さん、子どもだから。」
「窪田君と河本さん、最近、ほんと仲良いよな。」
「え?
やだ、課長ったら、また。
違いますよ、窪田さんは、誰に対してもああなんですよ。」
「ああ・・・。
そういえば、そうかもな。
窪田君は、いいな。」
「え?」
「誰とでもすぐ仲良くなる。
いいよな。」
「・・・課長だって、皆から好かれてます。」
いつもと少し違う課長の様子に、私は少し困惑しながら言った。
「ありがとう。
でもな、なんか、壁があるっていうのかな・・・。
僕は、かっこつけだから、うまく自分を出せなくて・・・。
・・・って、いい年しておかしなこと言ってるね。」
「そんなことありません。
課長はかっこつけなんじゃなくて・・・。実際かっこいいんですよ。」
「え?」
「あ、えっと、すみません、変なこと言いました・・・。」
「いや、ありがとう。」
コンビニの前を通った時、課長が言った。
「お、肉まん。
そういや腹減ったな・・・。
肉まんでも食べながら行こう?
おごるよ?」
「あ、ありがとうございます。」
課長が肉まんを買ってくれた。
温かくて美味しい。
「ご家族、待ってるんじゃないですか。
課長がこんなに遅くなること、珍しいから。」
何を話したらいいのかわからなくて、そんなことを聞いてしまう。
「ああ、どうかな・・・。」
課長が、どう答えたらいいかわからないという顔で言葉を濁した。
美香さんから聞いた話、本当なのかな。
美香さんから、課長の家が揉めていると聞いた時、まさか、と思ったけど、今の課長の表情を見て、本当なのかも、と思ってしまった。
「そうに決まってますよ、課長のおうち、仲良さそうですもん。」
自分の中に、こんな意地の悪い自分がいるとは思ってもみなかった。
聞きたい。
本当のことを、聞きたい。
課長が、話したくなさそうにしたのがわかったはずなのに、追いうちをかけるようにプレッシャーをかけてしまった。
「はい・・・。」
「・・・って、ごめん、遅くなっちゃったな。
送るよ。」
課長が時計を見て言った。
「え、大丈夫です!」
「大丈夫じゃないよ。」
そう言われて、課長に送ってもらうことになった。
「準備、なんとか無事終わって良かったな。
河本さんのおかげだね。
あとは、明日、寝坊しないようにしなきゃな・・・。
新幹線、七時だったね。」
今日はだいぶ肌寒い。
街路樹のある道を、二人で並んで歩く。
「ほんと、早起きしなきゃ・・・。」
課長といると、窪田さんといるときのように自然に話せない。
「窪田君、羨ましがってるんじゃないかな。
ひとりだけ留守番で、ふてくされてるかもね。」
「あはは、そうですね。
窪田さん、子どもだから。」
「窪田君と河本さん、最近、ほんと仲良いよな。」
「え?
やだ、課長ったら、また。
違いますよ、窪田さんは、誰に対してもああなんですよ。」
「ああ・・・。
そういえば、そうかもな。
窪田君は、いいな。」
「え?」
「誰とでもすぐ仲良くなる。
いいよな。」
「・・・課長だって、皆から好かれてます。」
いつもと少し違う課長の様子に、私は少し困惑しながら言った。
「ありがとう。
でもな、なんか、壁があるっていうのかな・・・。
僕は、かっこつけだから、うまく自分を出せなくて・・・。
・・・って、いい年しておかしなこと言ってるね。」
「そんなことありません。
課長はかっこつけなんじゃなくて・・・。実際かっこいいんですよ。」
「え?」
「あ、えっと、すみません、変なこと言いました・・・。」
「いや、ありがとう。」
コンビニの前を通った時、課長が言った。
「お、肉まん。
そういや腹減ったな・・・。
肉まんでも食べながら行こう?
おごるよ?」
「あ、ありがとうございます。」
課長が肉まんを買ってくれた。
温かくて美味しい。
「ご家族、待ってるんじゃないですか。
課長がこんなに遅くなること、珍しいから。」
何を話したらいいのかわからなくて、そんなことを聞いてしまう。
「ああ、どうかな・・・。」
課長が、どう答えたらいいかわからないという顔で言葉を濁した。
美香さんから聞いた話、本当なのかな。
美香さんから、課長の家が揉めていると聞いた時、まさか、と思ったけど、今の課長の表情を見て、本当なのかも、と思ってしまった。
「そうに決まってますよ、課長のおうち、仲良さそうですもん。」
自分の中に、こんな意地の悪い自分がいるとは思ってもみなかった。
聞きたい。
本当のことを、聞きたい。
課長が、話したくなさそうにしたのがわかったはずなのに、追いうちをかけるようにプレッシャーをかけてしまった。