でも、好きなんです。
窪田さんが帰ってからは、仕事が手につかなくなってしまっていた。

出張に行くまでは、窪田さんのことが気になりはじめていたのに・・・。

課長とのキスが、すべてを変えてしまった。

窪田さんからの気持ちは嬉しいけれど、もう、課長のこと以外考えられない。

課長に・・・連絡してみよう。

たとえこっぴどくふられたとしても、単なる気の迷いだったと言われたとしても、

私は、課長が好き。

本気で、好き。

課長に、連絡してみようと思った。

少しだけ、時間をください、と。

そう思って、オフィスを出た。

課長に連絡しようとして、携帯を取り出してみると、課長からのメッセージが届いていた。


(どうしてこのタイミングで・・・。

なんか、信じられない。)


これは、いい予兆なのか、悪い予兆なのか、私にはもうわからない。

真冬の寒さで、息が白い。

夜も遅く、人通りはまばらだった。

緊張して、メッセージを開くことができないまま、自分の頭を整理するように、歩き始めていた。

課長とキスをしてから、気がつけばあの日のことを思い出している。

自分の身に本当に起きた、あの魔法のような夜のことを。

あの日の課長の体温や息づかいを思い出すだけで、心は満たされた気持ちになれた。

たとえ今、課長の気持ちがどんなものであろうと、これから先の未来がどんなものになるのだとしても、

あの日の記憶が、私をどうしようもないくらい幸せな気持ちにしてくれていることは、紛れもない事実だった。

ふと足を止めて、課長からのメッセージを読んだ。
< 65 / 70 >

この作品をシェア

pagetop