でも、好きなんです。
「髪質がかなりいいんで~、どんなスタイルでも、大丈夫だと思うんですよ。なにか、なりたいようなイメージってありますか?」

 バービー人形のようなお姉さんが甘えるような目線を鏡越しに向けている。

「うーん・・・。」

『うーん』というのは、私の得意なフレーズだ。ここでも早速登場する。

 私がまごついていると、お姉さんが、何冊かのカタログを持ってきて、ぺらぺらと私の前でめくった。

「例えばこんなのは、少しカジュアルな感じですね。こちらになると、少し重さが出て、大人っぽい感じになります。今は長さも重みもわりとありますから、お好みの感じで仕上げられると思いますよ~。」

 なりたいイメージ・・・。瞑想する修行僧のような顔で、真剣に考える。課長が振り向いてくれるような、おっと思うような髪型に・・・なれたらいいな。

「あのう・・・、なんかこう、女性らしいような、しっとりした感じで・・・。」

 私のあいまいなイメージにも、お姉さんは真剣な表情で、うんうん、とうなずいてくれる。

「なるほど、大人っぽい雰囲気ですね。そうしたら、毛先のほうだけ内側にまかれるようなパーマにしましょうか。毛先にニュアンスが出ると、ぐっと顔周りが華やかになりますよぉ。」

「は、はい、そうしたら、それで・・・。」

 ・・・いよいよ、この髪型が手を加えられちゃうわけか・・・。ああ、あまりにも今風で変になったらどうしよう。私の心配をよそに、お姉さんはてきぱきとした動きで、私にタオルやらクロスやらを巻きつけて、シャンプーを始める。


ああー、どうなっちゃうんだろう!


・・・いい年して、パーマくらいでビビる私。さすが彼氏いない歴=年齢・・・。
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