S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
本編 

プロローグ


昔から、可愛げがない奴だと散々言われてきた。

今更、性格を変えようだなんて思っていないし、また、すでに変えようが無いことにも気が付いている。


だから。
仕方ないのだ。
そもそも、仕事のミスを笑って許してもらおうなどとは思っていない。


だけど。
さすがに落ち込んだ。
この五年間、真面目に頑張ってきたことを全て否定された気がして。


そして。
ようやく気が付いた。
この性格を褒めてもらったのは、五年前のあの日の彼が最後で。
今までの私を支えていたのは、その彼の言葉だった。


たとえ。
全てを否定されて、支えを失っても。
私は涙をこぼさなかったし。
キーボードを叩く手を休めなかった。
可愛げがないと言われるのも、もっともだ。


でも、これが私だ。
苦しくて、情けなくて、逃げ出したくても。
これが、松岡いずみという人間なのだ。
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