S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
それでも、彼女が会社に順応したのか、逆に会社が彼女に順応したのかわ分からないが、秋口には入社当時と比べると出来る仕事も増えて、社会人らしいお洒落も身についた。
元々かわいらしい雰囲気である彼女は今やすっかり課のアイドル的な存在だ。
特に部長はお気に入りのようで、このごろは得意先や接待に度々彼女を連れ回している。

最初が最初だけに、少し成長するだけで、ぐっと好感度が上がるのだから、やはり世の中というのは不公平だと思う。
それと同時に、もっと頑張れば、ますます魅力的な存在になるだろうにと残念にも思う。

元々、場の空気を読むのは上手いのだ。初対面の人とも会話が難なく出来るタイプで、営業には向いている。
彼女にそれとなく伝えたら「合コンで鍛えてるんで」と、見当はずれの答えが返ってきた。
あくまで、恋愛や結婚に興味はあるが、仕事への意欲は全くないらしい。
私は相変わらず、そんな彼女のミスを注意しつつフォローする日々だったが、それももう仕方がないと諦めかけていた。

そんな時、彼が帰ってきた。

佐藤英介。
私に鬼のように説教を繰り返した男だ。
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