S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
間違っても彼への失望が原因だったとは思いたくないが、どこかで影響していたことは否めない。
佐藤が着任してから二週間目の今日、私は自分の仕事のミスに気が付いた。
昼一番に相手先に行き、何とか首の皮一枚を繋げて帰社した夕方に、待っていたのは佐藤からの叱責だった。
「こんな新人みたいなミスして、気が抜けてる証拠だな。」
厳しい彼の表情に、久々に凹みながらも、やってしまったまのは仕方ないと、その言葉を受け止める。
「絶対に挽回してこいよ。」
プレッシャーを掛けられて、顔をあげた時、視界の片隅にこちらを見つめる安井萌が入った。
周りの誰もそのことに気づいていないが、彼女の表情は実に満足そうだった。
私としては彼女に恨まれる謂われはないが、彼女にとっては私は口うるさい邪魔な存在なのだろう。
私がみんなの前で叱責されている姿がお気に召したようだった。