S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~

欲しいのはアメかムチか


できあがった資料を印刷して、時計を見れば夜の10時を過ぎていた。
思っていたよりは早く仕上がって、ほっと胸をなで下ろした。

いつもなら何人かが残業しているのが当たり前の部署だが、今日は全員が定時を過ぎると仕事を片づけ始めた。
少しばかり遅くなったが、佐藤の歓迎会が開かれるからだ。

おそらくすでに一次会はお開きになっているだろう。
会費はあらかじめ幹事に渡してあるから、私が間に合わなかったところで特に問題はない。
そもそも、夕方のお説教により、私のミスは皆が知るところとなり、誰も私が来られるとは思っていないだろう。


「私、今日はずっと佐藤さんの横でお酌しますね!」

ふと、安井萌が帰り際に上げた楽しそうな声を思い出す。
イケメンで仕事も出来る独身の上司は彼女の大好物であるに違いない。
そして、佐藤の彼女にお酌をされて、鼻の下をでれっと伸ばているところを想像する。

私は彼に何を期待していたのだろう。

ただ、泣かないことを褒めてもらっただけで。
自分が彼の特別にでもなったつもりでいたのだろうか。
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