S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
「あと、確かに泣かなかったことは褒めたけど、何が何でも泣くなとは言ってない。」
そう言い出した彼は私の腕を掴んでいた手を離して、私の頬の涙の跡を指で優しくなぞった。
「無闇やたらに泣かれるのは困ると言っただけだ。当然、問題を解決するための努力は必要だけど。辛くて耐えられないなら別に我慢せずに泣けばいい。」
「でも。」
「まあ、オフィスの真ん中で泣かれるのは勘弁だな。だから、今日はよく我慢した。」
彼の手が私の頬を離れて、優しく頭をポンポンと叩く。
不覚にもその手が嬉しくて、また一粒涙がこぼれた。
それを見て彼がまた口を開く。
「あと、出来れば俺以外の男の前でも泣くなよ。」
「へ?」
彼の発言の意味が分からずに、思わず間抜けな声を上げれば、不意に彼の腕の中に抱き寄せられた。
「可愛すぎるから、誰にも見せたくない。」
そんな爆弾発言に、私の体温は瞬く間に上昇した。