S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
「ちょっ…佐藤さん、ひょっとして、酔ってます?」
「酔ってない。俺がザルだって、知ってるだろう。」
確かに、新人時代に何度も付き合わされたのでよく知っている。
「だったら…え?あ?ちょっと…」
「ちょっと、落ち着け。そもそも、最初に告白してきたの、お前の方だろ。」
「えっ?」
全く見に覚えのない発言に、今日一番の驚きの声を上げる。
いつ?私が?
その前に、私ってそもそも、佐藤さんのこと、好きなの?
パニックになる私を彼が笑いをかみ殺しながら見下ろしている。
「安井にヤキモチ妬いちゃって、お前、可愛いのな。」
「え?あ、あれってそういうこと?」
未だ頭の中は整理しきれていないものの、恥ずかしくて顔が熱くなる。
「ひょっとして、無自覚?」
「えーっと、あれは仕事上の話で…」
咄嗟に苦しい弁解をすれば、彼は意地悪そうに笑って、次の爆弾を落とした。
「何だ、そうなの?俺、すっげー嬉しかったのに。なんだ、仕事上の話だけね。ふーん。」
「いや、まあ、その、なんというか…」
今更ながらに自分の気持ちを自覚した私は、もう何と言っていいのか分からなくてしどろもどろだ。