S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
二人でオフィスを出て歩く。
彼と二人きりでいるのは全く珍しいことでもないのに、今日はどこか新鮮な気分だ。
「あ、ラーメン、間に合うかな?」
「えっ?まだ食べる気ですか?」
「だって、腹減ってるもん。」
「体に悪いですよ、帰りましょう。」
そう言って彼の手を引けば、後ろからくすくすと笑い声が聞こえてくる。
「やけに積極的だけど、今日は何もしないぞ。」
「そういうつもりじゃありません。」
慌てて手を離せば、今度は彼がしっかりと手を繋いでくる。
「お楽しみは、今日の失敗の分、取り返してからだな。」
満足そうに笑う彼は、やっぱり仕事に熱心な厳しい上司の顔で。
「週末は覚悟しとけよ。」
意地悪そうに耳元で囁くのは、すっかり甘い恋人の声だった。