Ｓ系課長のアメとムチ～恋はお叱りのあとで～
俺と彼女は、絵に描いたような、よき先輩と後輩の関係で、二人を繋ぐのは純然たる師弟愛のはずだった。


だけど。
それは、ただ単に俺が（ひょっとすると彼女も）鈍感だっただけの話で。

後輩として可愛がってきたつもりの彼女が、どうやら俺にとっては、特別な存在だったことに気が付いたのは、間抜けなことに異動した後だった。

気づいた時には既に遅く、物理的な距離が数百キロも離れた状態では、簡単にどうこうできる訳もない。
たまに、出張や研修で顔を合わせる時に、軽く会話をするくらいで、きっとこの想いはそっと胸にしまい込んで、いつかは諦めなくてはならないだろうと思っていたし、実際に月日がそれなりに流れれば、時々しか彼女のことを思い出さなくなっていた。

かといって、他にこれといって新しい出会いもなく、日々の仕事の忙しさに恋愛なんてする気が起きなかった俺は、彼女への淡い気持ちを抱えたままこの四年間を過ごしてきたのだった。


そんな俺に、突然チャンスがやってきた。
昇進と同時にもたらされたのは、元いた支社への出戻りの辞令だった。

こうして、俺は久々に彼女と同じオフィスの空気を吸うことになる。
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