Ｓ系課長のアメとムチ～恋はお叱りのあとで～

「そんなの、適当に誤魔化せば済む話だろ。…だいたい、何でまだ俺のこと名字で呼んでんだよ。」

大げさにため息を漏らした原因はむしろそっちのことで、プライベートな時間でもいずみは俺のことを名前では呼ばず、敬語で話す。

「だって、絶対うっかり会社でも出ちゃいますって。」

というのが、彼女の主張。
やはり、元々の性格はそそっかしいいのだろう。
本人も自覚があるのか、付き合い始めて三ヶ月経っても、頑なに譲ろうとはしなかった。

「大丈夫だって。」
「絶対だめです。佐藤さんはよく切り替えられますね。」
「そんなの自然と会社行けば仕事モードのスイッチ入るだろう。」
「…ええ、怒られてるときは同じ人物だと思えないですからね。」

相変わらず、仕事中の俺はちゃんと厳しいままらしい。
我ながら、この点はもっと褒めてもらってもいいくらいだ。

「そうだ、別人だよ！別人だと思えばいいじゃん。」
「そんな、無茶な。」
「ほら、取りあえず、今、呼んでみろよ。」

強引にベッドに掛けて服を着る彼女の腕を引けば、彼女が観念したような視線を向けてくる。

俺の勝ちだ。