S系課長のアメとムチ~恋はお叱りのあとで~
「えっと…英介、さん?」
絞り出すような声で、俺の名前を初めて呼んだ彼女の頬は、みるみるうちに赤く染まっていく。
今更、俺のことを名前で呼ぶのが、よほど恥ずかしかったのだろう。
彼女が頑なだった理由が、単にうっかりミスを防ぐためだけで無かったことを知る。
呼ばれた感想は、素直に嬉しい。
だが、思わずにやけそうになる顔を必死に隠して、あえて、不満げな表情をつくる。
「なんで、さん付け?しかも、疑問形?」
「え、いや、だって…」
本当に不満だった訳じゃない。
もう少しだけ、‘’松岡‘’じゃなくて‘’いずみ‘’で居てほしかっただけ。
自分でも呆れるくらい、俺は彼女に惚れているらしい。
彼女の腕を強く引いて体を少し倒し、そのまま強引にキスをしながら、彼女を再びベッドの中に引き入れる。
彼女の困ったような表情に、俺の理性はあっけなく退散する。
「んっ…ちょ、っと…」
最初は抵抗していた彼女も、早々に観念したようで、やがて体の力は抜けてされるがままになっていく。
彼女は言う。
俺が本気の時は絶対に逃げられないと。
本当に学習能力の高い恋人で助かる。
「しごと…」
「だから、まだ十分間に合う。」
「でも…」
言葉では抵抗しているが、彼女の目はすでに戦意を喪失している。